2011年4月19日火曜日

生き残ったテルスターとフェーンダム=オランダ2部

 8月13日にオランダ2部リーグが開幕した。そのうちのひとつ、テルスター対フェーンダム戦は1?1の引き分けに終わった。

 昨季、テルスターのスタジアムはメーンスタンドが改築され、ここだけは清潔感にあふれていたものの、ゴール裏はくち果てていた。しかし今回、開幕戦で訪れてみると、西側のゴール裏にささやかながら400人の立ち見客を収容できるスタンドが作られていた。ここがテルスターの新たなサポーター席となる。
 それでもテルスターのスタジアムは変わらないものがいっぱいある。町工場の守衛所のようなファンショップもそのひとつ。チームのTシャツはXLサイズしかないが、わずか5ユーロ(約550円)。思わずクラブへのお布施のつもりで購入した。
 テルスターの本拠地アイマウデンは漁業の町だ。そのため東側ゴール裏にはマストがあり、これにつるされる魚を入れるバケツの数によってホームチームとアウエーチームのゴールの数が表示される。一応、控えめながら電光掲示板もあるが、魚のバケツによる得点表示は伝統として残されている。ちなみに腐ったようなコンクリートで寂れたままの東側ゴール裏のスタンドは、スポンサーの大きなシートで隠されている。
 バックスタンドで応援する熱狂的な名物親父も元気そうだった。かつてはやったチアホーンの応援だが、今でも鳴らしているのはこの親父ぐらいだろう。

 両チームが入場した。「おれたちはまだ生きている!」。そんなフェーンダムのサポーターが広げたバナーを見ると、テルスターにもフェーンダムにも思わず「よくぞ今日、この舞台に立てたね」という感慨で鳥肌が立った。
 フェーンダムは昨季終了後、裁判所で破産を宣告された。これは前経営陣のミスマネジメントによるもの。当時のメーンスポンサーと偽の契約書を作るなどしてKNVB(オランダサッカー協会)にでたらめな予算を提出していた。経済不況のもと、これが履行できず現金が回らなくなると大騒ぎになり、フェーンダムは一度消滅しかけてしまった。それでも裁判所に異議申し立てをしている間に時間を稼ぎ、お金をかき集めて何とか生き残りに成功した。

 テルスターも昨季は2部残留を決めるのに、最終節までかかってしまった。アイマウデンにはインドの『タタ?スチールグループ』となった名門鉄鋼会社『コーラス』があるが、タタとコーラスによってテルスターは徐々にプロサッカークラブらしい環境を整えつつある。2008年には破産しかけたものの、AZとの提携を結ぶなどして人件費を抑え、10年夏には財政状況がオランダプロサッカー36クラブ中、『最高』を意味する『カテゴリー3』の栄誉を受けた。これはたった4チームしかない。もしこれが3部リーグに落ちていたら、逆に深刻な経営危機を迎えていただろう。
 この日迎えた晴れ舞台は、決して開幕戦だけを意味したのではなく、「おれたちはまだ生きている」という叫びも意味していたのであった。

 テルスターは今季11人もの大量補強を行ったが、そのうち7人がAZからの貸し出し選手。中でも左ウイングのチャシは伸びやかな肢体(したい)からのテクニックとスピードが素晴らしい。
 試合は13分、デ?フォーゲルが素晴らしいFKを直接決めて、テルスターが先制したが、後半ロスタイム7分にPKを決められ逃げ切りならず。PKを与えたのはクロスに対して思わずハンドを犯してしまったDFファン?ハウゼンだった。
 ここに名前を挙げた3人は全員AZから期限付き移籍でやってきて、フェーンダム戦がプロとしてデビューマッチだった。ファン?ハウゼンのハンドにはやれやれと思うしかないが、それでもこの日ピッチに立った5人のAZ組には貴重なプロでの実戦の場になっただろう。

-Toru Nakata from Holland-

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引用元:arad rmt

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